「宇宙基本法」成立。

080526 日経新聞

ついに成立してしまったか、という感じである。何が?宇宙の基本法が、である。宇宙の基本について、法で定められてしまったのである。宇宙の謎は、知らないところですでに解明されていたのだ。そして法律の下で管理・運営されるのだ。おそらく下位規程として、「火星取扱基準」、「月運営細則」などもあるのだろう。この分ではおそらく、「銀河特別措置法」、「神運用基準」、「涅槃設置細則」などが成立する日もそう遠くはないはずだ。いや、知らないだけでもうすでに施行されているのか。この世界の全ては法律により管理され、法律に従って粛々と動いてゆくのみなのだ!
…などと興奮していたら、どうも様子が違う。


宇宙基本法とは、日本の宇宙開発の方向性を示す初めての法律で、宇宙開発の推進体制などを定めたものであり、宇宙開発の目的として安全保障が明記された。1969年の国会で「宇宙開発、利用は平和目的に限る」と決議され、解釈として「非軍事」に限るとされていたものを「非侵略」に拡大している。この法律により、自衛隊が衛星を保有できるようになるほか、偵察衛星や早期警戒衛星の配備も可能になる。
成立の背景としては、宇宙の防衛利用を訴える声が強まったのに加え、宇宙産業の弱体化が進んでいたことがある。
産業界には、官需が拡大するとの期待もある一方、厳しい財政状況の中で防衛衛星に巨費を投じることに対し、慎重な意見もある。


…ということで、なんだ宇宙の基本的な生成・発展について定めた法律じゃないのか、常識的な。ということなのだが、よく見るとこれはこれで別の意味で(当たり前)重要な法律である。

「宇宙は平和利用に限る。但し侵略目的でなければ軍事利用も可」ということで、もはや「平和」の定義すらよく分からないことになっているのだが、憲法9条についての議論が続く一方で、こうしてなし崩し的に軍事行動へのハードルが下がっていく。後世の歴史の年表で、「軍靴の足音が響く時代」などとされなければよいけれども。
過去20年、「国際貢献」などと言いながら着実に軍事行動の範囲を広げ、大衆は閉塞感を感じながらカリスマを求め、右傾化が進み、国民は年金問題をきっかけにデータベース化され…と一つの方向に向かっているように思われ。
「リスク」とか「脅威」とかの不確実なものを相手にすると、需要はどこまでも創出され、仕事は増えて給料が上がるという資本主義というのは一体どういうことなのか、ということでもあるし、歴史は一部の権力者達の意思や国同士のパワーバランスなどを超え、地球レベルの様々な問題のベクトルの総和から必然的に動くという歴史観から、経済のグローバル化とか、IT革命とか、世界のフラット化とか、地球環境問題とか、人口の爆発と食糧問題とか、世界の民族と宗教の問題とかがどう関っているのかを考えてみたい。当然、考えるだけだけれども。
いずれにしても、宇宙を相手にすると、考えがとても大きくなります。