「海馬」(池谷裕二、糸井重里)

(070803読了)

<脳の活動>
・手や口を動かすと脳も動く。
・やる気を出すには、まず実際にやってみること。すると「側坐核」(脳の「りんごの種」のような位置にある部位)が自己興奮し、アセチルコリンを送り出す。
・30歳を過ぎるとつながりを発見する能力が伸びる。これは以前に学習したことを生かす能力であり、推理力。
・旅は脳を鍛える。空間情報が海馬にとって最も刺激になる。
・夢は脳の情報の整理。記憶の断片をでたらめに組み合わせる作業。
・睡眠は6時間以上は必要。眠る前に一通り仕事をやってみるとよい。
・「頭がよくなる薬」は朝鮮人参。
・頭を働かせるには、ブドウ糖、コーヒーの香り、寒さと空腹。

<生き方>
・脳は「体験」を通して、べき乗で発展する。実際にやった人にしか残らない。
・2割の「つらくてもおもしろいことをしたい人たち」が、そうでない残りの8割の人たちを養うのではないか。
・脳のストッパーをはずすこと。
・「やりすぎてしまった人」が天才。
・次に向かうベクトルがあるかどうか。
・人の本質は「変化」である。
・失敗が人を賢くする。
・関係を持てない細胞は死んでいく。「関係性」が大切。
・創造性も技術。HOWの記憶の組み合わせ。パターン認識の数による。
・認識は記憶の組み合わせ。個性も記憶の差。
・いかに新しい視点を加えるか。新しい記憶の体系を作ること。
・「はじめに言葉ありき」。脳は自己認識に従って行動する。宣言の強さ。
・「誇り」の大切さ。自分の中に根拠を持つこと。

池谷氏単独の本も非常に分かりやすいが、そこに糸井重里という超文系かつ超感覚的な人が絡むことでさらに枠が外れ、脳の働きをとっかかりにした「生き方」の話になっている。
そして考えてみれば、我々が知りたいのもつまりはそういうことで、「脳の機能がどうなっているか」というより、「だからどうすればいいのか」という実用性を求めているのかもしれなかった。
けれども、現在の脳科学は多分それほどいろいろなことを断言できるほどには進んでおらず、この本のように多少強引にでも教訓を引き出してくれた方が、我々のニーズには合うのだろうと思う。つまり、とても面白かった。
最近読んだ茂木健一郎氏の「脳を活かす勉強法」(080426読了)、築山節氏の「脳が冴える15の習慣」(080510読了)と同じことを言っている箇所もあり、理解が進む。