「脳を活かす勉強法」(茂木健一郎)

080426読了
<ポイント>

1.いかにして脳を喜ばせるか。
(1)「ドーパミン」による「強化学習」のサイクルを回す。
ドーパミンは快感を生み出す脳内物質。
・不確実なことを達成したときに大量に放出される。
・脳の本質は「自発性」。教育では誉めて伸ばすこと。
・苦しさを「突き抜ける」感覚はくせになる。
杉浦直樹は脳に負荷をかけて喜びを引き出すタイプ。作品制作中は「夢か現か、まるで半眼のような精神状態」になるという。

(2)「タイムプレッシャー」によって脳の持続力を鍛える
・行動に負荷をかけること。自分で制限時間を設定する。

(3)集中力を身につける。
1)速さ
2)分量:圧倒的な作業量。ずっと作業をこなす状態の持続。
3)没入感:勉強と自分が一体になる感覚。「studious」状態。
・「フロー状態」:自他の区別がなくなるくらいの没頭。没我の境地。この感覚を覚えておくこと。
・「瞬間集中法」:思い立ったらすぐに勉強に入る。細切れ時間を活かす。


2.記憶術
・記憶は側頭葉の側頭連合野に蓄えられる。
・側頭連合野は「モダリティ」(五感、動機、心的態度など)を統合する。
・重要度の判断は海馬(と扁桃核)で行う。反復されたものは重要と判断される。
・大量に読み、書き、聞いて、問題を解くこと。
・一度目を離して(一時的に記憶して)書き写すことが重要。
・創造的な仕事は朝すべき。夜は未整理の記憶でいっぱいに。レム睡眠で記憶の整理、定着を行う。


3.読書法
・大量の本を読む。
・考え事をすると脳の活動領域は狭くなる。クールダウンになる。
・断片的なインプットでも良い。(ただし一度読んだ本で。)
・インターネットは情報の宝庫。世界の最高学府。(ただし英語。)
・自己完結したものには意味がない。「知」は人とのかかわりの中で育てる。


4.脳と勉強
・肉体の限界より精神の限界が先に来る。リミッターを外すこと。
・自分の欠点、弱点、ミスを直視できるかどうか。原因を分析し、修正できるか。人は弱点の克服にモチベーションを発揮する。


5.一回性と遇有性
・一回性(:その後の人生を変えてしまうような経験)が脳を変える。
・「変人」であることの自由。ケンブリッジ大学。日本は平均値へ引きずりおろそうというベクトル。
ミラーニューロン前頭葉の運動前野)による共有回路。他人の動作を見るだけで、自分も同じ動作をしたかのような活動が生じる。他人との関係が重要。
・遇有性(:予想可能なことと不可能なことの混在)の中に人生を豊かにする叡知。
・感情とは不確実性に対する適応戦略。
・「安全基地」があるからチャレンジできる。親の役割は子供に安全基地を与えること。
・子供の自主的な挑戦を後ろから支えること。見守ること。見てあげること。

分かりやすく、非常に面白い。
よく、人が本当に好きな自分の趣味なんかについて熱心に語っているのを聞くと、たいして興味がない分野でも面白そうだと思ってしまうことがあるが、この本を読むと勉強って面白そうだと思ってしまう。…「ミラーニューロン」のせいだろうか。

この本が良かったので「欲望する脳」も読んでいるが、これも非常に良い。とても教養が深い人だ。かつ興味の対象が似ている。