「エデンの東」

なぜ今までこの映画を観なかったんだろう、という作品がある。
僕の場合、そんなものはもう何十本とあるのだが、その中の1つ。
あまりにいろいろなことが語られすぎていて、今さらいいやと思っていたというのが大きい。

これが伝説のジェームスディーンか。上目遣いの拗ねた目つき。なるほど言われてる通りだ。でもかっこいいのか?なんだか体がもこもこしてるし、表情や動きもナルシストっぽいぞ。
基本的に50年代っていう古さだから、テンポが遅くてのどかというか、かったるいなあと思いながら見ていたが。
しかし、父親に受け入れてもらえなかった時の、ジェームスディーンの目、表情、動き。これは震えた。すごい。松田優作で言うなら「なんじゃこりゃー」と叫ぶシーンくらいのすごいシーンだ。このシーンがあるだけでもう名作、という感じ。

テーマとしては非常に根源的かつ普遍的なものがあり、さすがは古典。父親や恋人を巡る兄弟の対立、硬直した善の世界に対する魅惑的な悪の世界。
多分もっと若い頃に観たら感じるところも多かったのだろう。

今これを観て個人的に感じたのは、「一人っ子の駄目なところは、愛は奪い合うものだという基本的な感覚がないことだ。」ということ。一人っ子には、愛は競争して獲得するものだという感覚がないのだ。与えられるものだと思っている。そして比較の対象がないから、際限がない。常に愛は与えられるはずだという自信と、十分与えられているのだろうかという不安が同時にある。どちらも現実的でない。
こんなことを考える僕も当然一人っ子であり、例えば村上春樹の独特な世界も、「一人っ子である」ということで半分以上説明できる。まことに、一人っ子というのはそれだけで病気みたいなものなのだ。
中国なんかも一人っ子政策など取っていると、さぞかし住みにくい国になることだろう。