この時期、週末の街はすごいことになっている。
なんだこの人間の数は?
寒いから、みんな寄りそいたいのだろうか。
しかし真夏でも混み合っている場所である。
その相乗効果たるや。田舎者の私は祭りでもあったのかと思ってしまった。
とにかく冗談のような人間の数なのである。
それがチケット売り場からレストランから道路まで、どこもかしこも群れ溢れ並んでいるのである。

そんなときの僕は、極度に不機嫌になるか、脱力して笑い出すかのどちらかである。
後者の場合であれば、まさに「トホホホ…」といったところである。
人ごみの中でひとり「トホホホ…」と半笑いになっている人間がいれば、それはまぎれもなく僕である。
声をかけて頂いても構わない。
ただしそんな時にサインを頼まれても、快く応じることは約束しかねる。
もとい。
怒り、もしくは脱力して笑ったあと、自分を取り戻すために、どうして人々はこんなにまで同じところに集まろうとするのだろうかと考えてみる。
当然自分のことは棚に上げてである。
そして出た結論は、「みんな並ぶのが好きなのだ」ということである。
そうでなければ説明がつかないのだ。
人は列に加わることで安心するのだ。
みんながいる場所にいれば、そこはきっと楽しい場所だろうし、きっとおいしい店だろう。
自分で決断をする必要はない。
失敗するリスクを犯してまで自分たちで何かを探したり開拓したりする必要はないのである。
周りには自分と同じような人がいるから寂しくない。
ちょっとだけ待つという不便にさえ耐えれば、いつかは必ず自分の順番がくる。
いっしょに並んでいる人たちとのほのかな共感と、自分より後ろに並んでいる人たちへのほのかな優越感。
そして大行列の中、互いににっこり微笑みあうのだ。
3時間ほど待たされて入った店内でのびきったパスタなどをぼそぼそとすすりながら、そして達成感と満足感で高らかに笑いあうのだ。
そうだみんなきっとそうなのだそうにちがいないそうにきまっている。
畜生どこに行っても混んでるよー。

でもそんなときにふと自分を消して人ごみの中に溶け込む、これがすごい楽なんだよね。
(でもそんなことは都市生活者だったら20年以上前に気づいていることなんだよね。)
そして、秋が深まると情緒不安定な僕も、12月に入ると、「華やかな冬の酔いに任せて〜♪」などと小沢健二を口ずさみながら、元気になるんだよね。
実際酒呑んで酔ってるしね、たいてい。
ネオンがまたきれいだしね。
やっぱ冬っていいよね♪
(いいのかそれで?)