もう朝はこない

「眠れ眠れ眠れ。もう朝は来ない。」(ユニコーン
というわけで眠る。
1日16時間も眠ると冬眠した熊の気分だ。
脳がとろける。
世界の成り立ちが変わる。
この世界とは違った色合いの、違った感触の、言葉では言い表せない「もの」がリアリティーを持って迫る。
例えば過剰な丸みを帯びた建物のイメージ。中間色で、妙に艶かしい光沢を帯び、ぼやけているようで、奇妙な存在感がある。
ねじれた論理。事物は妙な結びつきを示す。言葉は逆流して無意味に溢れ出す。しかしそれが意味を持っている。
夢の世界。

体温が下がっている。
からだはふわふわとして、心臓もうまく動いていない。
いつまででも眠い。
郷愁。
体温が上がっていた時には振り捨てていた過去が蘇ってくる。
失われた時を求めて」。
過去が、思い出し、感じることを要求する。
その世界に浸ることを要求する。
時間の中に漂うことを要求する。
不定形な軟体生物のように意識が時間の中に溶け出していく。

リズムは繰り返される。
体温が上がっている時、感情は乾き、視線は今と未来へ向かう。
実用的なことの中、物事は明確で、全ては安定している。
走っている時、安定している。
体温が下がり、立ち止まると、生暖かいぬかるみに足を取られて沈み込み、夢と過去の世界へ落ちていく。
それは完全に沈みきるまで続く。
ぬかるみの奥深くには底があって、そこに足がコン、とつくと、再び上昇が始まる。

そんなことを何度繰り返しているだろう。
しかしこうしたリズムを繰り返さないと、現実の中だけでは、乾ききって枯れてしまうのだろう。
吸収された全ての情報は、すぐには言葉にならず、リアクションとしても表れず、ただ静かに自分の奥深くに吸収されていく。
深い井戸に投げ込まれた石のように。
それらは消え去ることはなく、再び表面に出ることをじっと待っている。
意識の海の底で発酵することを待っている。
夢の世界で、考えられることを要求している。
それらはやがて結びつき、一塊の別のものになる。
そして初めて浮かび上がってくる。
だけど意識の奥底からぼんやりと浮かび上がるその塊はとても脆くて、それをすくい上げて言葉に置き換えようとする試みは、いつも非常な苦労と細心の注意を伴う割に、とても不完全で、時に無意味だ。