インド旅日記(12) 再生(バナラシ(5))

ammon11111996-03-24


正露丸を飲み、体調はまずまず。
朝起きてしばらくは、しかし、幻聴が残る。夢を引きずることは、死の世界を引きずることなんだろう。


シャワーを浴び、チェックアウトは12時。
このゲストハウスとも今日でお別れだ。今日が正式なオープンの日で、夜にはパーティーもするらしい。
Mさんは残り、僕は出て行く。
なんだか、すごく彼には助けてもらったし、好きだった。途中で疑ってしまったけれども。

昼から、チャウメンとビール。
2人で街を歩き、彼がズボンを買うのに付き合う。
そしてガンガーへ行く。
ここしばらく、ゆっくり見ている暇がなかった。座り込んで、言葉を交わすでもなく、ずっと河の流れを見ていた。
日曜日で、同じようにぼーっと河を眺めている人がたくさんいた。
陽射しは強い。
その陽射しの下で、静かな河を、飽きることもなく眺めていた。
こちらの岸は人で溢れ、生活で溢れている。向こう岸は静かで美しいが、人は住まないという。「彼岸」の世界なのだ。
河で泳ぐ子供。ボートを漕ぐ人。
そのまま、5時頃までそこにいた。
名残惜しくて、BABA―静かさと、清潔さと、平和の場所にもう一度行き、一杯だけチャーイを飲む。
6時頃に出る。Mさんが送ってくれる。


夕食を食べておくことにする。最初に行った安食堂に行く。ターリーを頼むが、混んでいて30分くらいかかる。嫌な感じだ。金も、両替したばかりだというのに、残り少ない。
ムガールサライ発、20:28の列車に乗らなくてはいけない。しかし、リクシャーがなかなか見つからない。
声をかけてきた奴と交渉するが、苛立っていて、大声になる。
「50ルピーと200円だ。」
「金がないんだ!」
「両替すればいい。」
「だからそんな時間はないんだ!!」
仕方なく、85ルピーと100円で手を打つ。しかし、こいつはただの交渉人で、肝心のリクシャーがなかなか来ない。
今日は祭りの日だ。祭りと混雑と不安。「天井桟敷の人々」のエンディングみたいな、嫌な符合だ。
7時30分近くになって、やっと1台つかまる。これも若く、無口な男。悪路の上、トラックの横をぶっ飛ばす。しかし不安は消えない。
"乗客に日本人はいませんでした。いませんでした。"―イエローモンキーの「JAM」の、このリフレインにあんなにも心が動いたのは、自分が死ぬことが分かっていたからじゃないか。強い焦りと不安。


8時ちょうどに駅につく。感謝の気持ち。ドライバーと握手していた。
1つずつクリアーしている。先へ進んでいる。
駅で、列車の席探しはスムーズにいく。A/Cクラスなので静かだ。向かい合わせの席4人中、日本人が3人。 あまり言葉を交わさず、少しだけしゃべってすぐに寝る。
寒くて何度も目が覚める。