インド旅日記(11) 生還(バナラシ(4))

ammon11111996-03-23


頭の後ろはしびれ、ぼーっとしていて、時折「ゴーッ…」という音は聞こえたりするものの、とにかく寝て、目覚めた。
レストランで1人、食事をする。前と同じ場所。連続性を確かめる。店のおやじと会話もできる。食欲はない。
街を歩く。普通にリクシャーをあしらえる。


陽射しが強い。
思わぬ形でプリントすることになった写真を受け取りに行く。自分の何よりの存在証明として。
そして、写真をジューススタンドの少年に渡したかった。喜ばせたかった。それは今までにない感情だった。でもそれは自分のためだった。

両替のため、銀行へ行く。
急に暗いところへ行ったせいか、頭がしびれ、くらくらしてくる。床をじっと見る。タイルの模様は宇宙だ。全てがこことつながっている。ここが世界の中心なのかもしれないと思う。待つことが不安。イライラしてくる。じっとしていることができない。

STDへ行く。バンコクから成田までのノースウエストのリコンフォームのため。しかし、バンコクのオフィスもつながらない。嫌な感じだ。
家にかけてみる。父が出て、懐かしくて、何も変わったことは言わなかったが、話をしていたくて、長話をしてしまった。 ノースウエストへの電話を頼むことにする。ありがたい、親の存在。
サイクルリクシャーで、駅までカルカッタ行きの列車のチケットを取りに行く。
とにかく、前へ進むこと。必要な作業をこなしていくこと。


インドは人が溢れていて、開かれていて、涙が出そうになった。
みんな、生きている。だから、生きていける。リクシャーワーラーの体はたくましく、これが正しいんだと思った。これが生きることなんだと思った。
生は荷を背負って歩くこと。生は登山。平凡だけど、そんなことを思っていた。今まで自分は何も知らなかったんだと思った。


夜は、Mさんと酒を飲みに行く。
地下にある、ちょっと高級っぽい店。タンドリーチキンは○ンタッキーより美味く、ビール、ウイスキーともに美味くて、すぐに酔いがまわった。意志を働かせつづけていたので、疲れていた。
酔うことも怖かったのだが、酒は柔らかく頭をしびれさせ、気分をよくさせた。
夜、酒を飲めば、なんとか毎日はやり過ごせる。そんな気分が初めて分かった。本当に、何も知らなかったのだ。これは、本当に、通過儀礼の旅だったんだ。みんな、こんなことは知っていたのかもしれない、そう思う。


STDで、父から、リコンフォームはあっさりOKだったと聞く。嫌な感じは、前に進んでいることで、小さくなっていく。
帰ると急に気分が悪くなって、吐く。体が弱りきっている。バナラシに来てからずっと下痢が続いている。変に効いたのも体調のせいだろう。