インド旅日記(4) 観光ツアーは安心(デリー〜ジャイプル)

インドのヘビ使い


夢を見る。
ひどくのどが乾いている。(旅の途中で)家に帰り、冷蔵庫を開けて牛乳だのジュースだのを飲みまくる。そして今度はたくさん水分を持って来る。
何かを言い当ててしまい、場が気まずく、しらけるバラエティー番組の収録を体験する。


朝5時起床。
降りていくと、ホテルの従業員はカウンターの向こうや通路で雑魚寝している。それら寝ている人をまたいで外に出る。
朝のインドはまだ人も少なく、静かだ。だが、これくらいでちょうどいい。


6時15分発のジャイプル行き特急に乗る。
「A/C chair」クラス。2等に相当する。座席は広く、きちんとしたビジネスマン風の人や旅行客が乗っている。(街で声をかけてくる人間とは大違いだ。)
水にお茶に新聞、食事、ジュースのサービスがある。それはそうかもしれない。315ルピーだ。バスだと20ルピーだという。
窓の外は不思議な色。日が昇っても景色は茶色い。
…と思っていたが、後に茶色は窓の汚れだったことが分かる。


11時、ジャイプル着。
駅の構内にあるツーリスト・インフォメーションで、すぐにツアーに申し込む。60ルピー。ここでは時間も限られていたし、インド人との関わりに疲れ果ててもいたので、最初から申し込もうと決めていた。
そこに日本人がいたので、一緒に行動することにする。Kさんという、30歳過ぎの物静かで優しそうな男の人。仕事を辞めて今はバイトをしており、今回の旅行の後また仕事を始めるという。
やはり日本人と一緒だと(しかも英語がしゃべれる人だと)心強い。そしてツアーは安心する。人の中に入っていく必要もないし、自分で選択する必要もない。
問題は、ガイドが何を言ってるのか全く分からないことくらいだ。


バスで移動する。
最初は天文台の「ジャンタル・マンタル」。
曇っていて、太陽の観測方法がよく分からない。ガイドの説明もやっぱり分からない。
帰り際、駐車場の所に蛇使いがいる。絵に描いたようなインドだ。写真を撮る。チップを要求されるが、思わず強硬に拒否してしまう。
Kさんに、「払ってあげればいいのに。」と言われ、そう言えばそうかと思う。断るのが条件反射になってしまっていた。ちょっと後悔する。
次は「パレス」へ。映画の撮影をしている。
続いて、「アンベール城」へ。
ここが丘の上の城まで象に乗れるという場所だったが、今回のツアーでは乗れなかった。
アンベール城は、湖をはるか下に見下ろす場所に位置する、静かできれいな場所だった。人が周りにいない、自分だけの場所を持てるというのは、昔は貴族だけの贅沢だったのかもしれないと思う。
続いて、土産物屋へ。サリーを450〜600ルピーくらいで売っている。カウンター越しに対面してマンツーマンで売りつけられるが、必要以上に言葉が分からないふりをしてなんとかしのいだ。
ここで、ツアーに一人で参加していた小柄な女性が日本人であったことが分かる。無口な人で、中国かどこかの人かもしれないと思っていた。インド滞在は割と長く、砂漠のほうに行っていたとか。
いろいろな人がいる。なんとなく心惹かれる人達がいて、静かにすれ違っていく。


ツアーの最後は公園のようなところ。Kさんやその女性とぽつぽつ言葉を交わしながら、のんびりとくつろぐ。
静かで、安心だった。


Kさんと一緒に、歩いて宿探しをする。
今回の旅で初めて、乞食によく会う。しかし、2人のせいか平然と無視していた。2人でいると他の人と口をきかなくなる。相手に任せてしまう。それは安心ではあるが、インドとの関わりは薄くなる。よくないかもしれない。
宿は、「歩き方」にも載っていた、「ジャイプル・イン」にする。個室で一泊150ルピー。きれいでシャワーも出て、落ち着く。
昨日のみじめさ(まだ昨日のことだ!)と疲れがうそのようだ。違いは人の数だと思う。この街はそれほど多くの人がいない。人が多いとパワーに圧倒され、疲れる。


少し寝て、20時頃、一人で食事のために外に出る。
街は暗い。牛や馬が歩いている。地図で目星を付けておいたのだが、狭い通りに入り込んでしまう。完全に道に迷っている。少し不安になりながらも、虚勢を張って平然と歩く。周りは民家が並んでいて、人々はこっちを見ている。その中を途中で引き返すのがかっこ悪かったのだ。
そして普通の街食堂に入る。「dewani」という所。
後から、旅慣れてそうな日本人が入って来て、実はほっとする。「まだ1ヶ月。金がないからあと3ヶ月くらいいる予定だ。」というベテランだ。いろいろとアドバイスを受ける。
睡眠薬を入れられて入院した人に会った」とか言いながら、「でもインドはそんなに危なくない」などと矛盾したことを言う。中南米やアフリカに比べればまだ安全らしい。そりゃそうかもしれないけど…。


デリーでのことを話す。
土産物や食堂の値段は、だいたい相場だと言う。食事も、ナンを何枚も食べればそのくらいはするという。チャパティという、ナンを薄くしたようなパンを食べると安いと聞く。「ガイド料」も、払い過ぎだとは言われるが、そんなに法外な金額を払ったわけではなさそうで、ほっとする。
払った金額が変わったわけではないが、もともと気持ちの問題だから。本の影響か、自意識のせいか、「だまされる」ことに対して、非常に敏感になっている。
彼も偶然同じ宿に泊まっており、一緒に戻る。というより、彼がいなかったら戻れなかったかもしれない。


シャワーを浴び、本を読もうとするが、23時頃に停電。
そのまま寝る。