校長先生のお話

【プチ狂気な笑い】
昔、校長先生は毎週毎週全校集会で僕らにどんな話をしてくれていたのだろう。

今朝、校庭の花壇にチューリップの花が咲きました。
校長の常滑川です。
皆さんも、咲き誇れー!
思い思いに!精一杯!
それが校長の願いです。

えー、今日は皆さんに三つの輪についてお話したいと思います。
まず一つ目は、仲間の輪です。
仲間の輪とは、みんな仲良く、仲間はずれを作らないように、ということです。
今はなんだか、受験戦争の低年齢化によるストレスだかなんだか知らないが、どうもいじめがはやっております。
陰湿だ。
子供のくせに。
子供は何も考えずに笑っとりゃあいいんです。
げらげら笑い、そして騒いでおればいいんです。
無邪気に、たくましく、そしてげらげらと。

…やかましい!
今は騒ぐな馬鹿者が。
校長の話の間は黙ってるのだ。
それは当然のことなのです。

…そう、あなた。
今、生活指導の先生に殴られたね。
それでいいんです。
当然です。
口で言って分からんやつは体で覚えるしかないんです。
何しろ子供なのだからね。
これは仕方がないんです。
PTAは黙っているがいいんです。
うるさいのです。
頭が悪いのです。
何も分かってはいないのですから。
要は素人なんですね。
まあ、いいでしょう。

さて、二つ目。
これは、知恵の輪です。
これはおもちゃです。
無論冗談です。
知恵とは、情報です。
つまりこれはインターネットです。
情報のネットワークを大切にせねばならんのです。
情報化社会に、乗り遅れてはいけないのです。
時代は急速に動き始めております。
めまぐるしく動いております。
激しく!健やかに!
右も左も分からない、そんな思いを重ねていってはならないのです。
夢は大きく、さりげなく。
そんな思いを積み重ねていってもらいたいものです。

さて、最後。
三つ目は、チク輪です。
これは、練り物ですな。
紀文とかのが有名です。
おでんに入れてもうまいな。
私はこれが大好物です。
今の子供はやれステーキだ、やれ鰻丼だ、ビフテキだ、寿司だ、ステーキだ鰻だ寿司だ、なんだかんだと、やかましいのです。
大概にしてほしいのです。
私はそんな風潮が我慢ならんのです。
おまえら今に見ていろ。
絶対後悔するぞ。
私はそんな思いでいっぱいです。

許せない。
正直許せんのだ。
何も考えてない阿呆面が、時々我慢ならなくなることがあるんです。
蹴飛ばしてやろうか?
すみませんが、私はそうなのです。
あるいは教育者失格かも知れん。
だが、それが正直な気持ちなのです。

私は人生の選択肢を間違えたのです。
時々たまらない気持ちになります。
こんな話をしていて、君達に分かるのだろうか。
この俺のメッセージは、本当に君達に届いているのだろうか。
あるいは少年の日のトラウマとして、幼い心に残ってはくれんものだろうか。
私はそんな思いでこうして必死の形相で話しておるのです。

私はいつも必死です。
常に全力投球です。
私はそうなのだ。
どんな時でも本気なのだ。
どうにかして、どうにかしてこの気持ちを分かってほしい。
そうでなければ、私が生まれてきた意味がなくなるではないか。
何もいいことがなかったこの人生で。
せめて子供たちに。
子供たちに囲まれて、教え子たちに先生、先生と。
取り囲まれてグルグルと!
グルグルグルグルいつまでも!
私を囲め!
取り囲むのだ!

…それが輪なんです。
それが三つの輪なんです。
私はそのことが言いたいのです。
そのことが言いたくて、こうして毎週毎週、全校集会のたびにまったく同じことを何回も何回も繰り返ししゃべっているのです。
私はいつでも遠回りだ。
本当に伝えたいことはどこにも届かないんです。
手にしたものはすべて消え行く定めなんです。
ウィーーーー!!
今のがルパンだ。
エンディングテーマです。
提供は紀文だった。
夕方五時ごろ。
紀文のチクワが、はんぺんが。
そのころから私の心を捉えて離しはしなかった。
そうです。
それがチク輪なのです。
すべてはつながっているのです。
最初からそれが言いたかったのです。
それが知恵の輪なんです。

私は今、感動しております。
正直、ここまで考えてはいなかったのです。
すべてアドリブです。
私は自分の才能が恐い。
何も分からない子供の前で話なんかしたって分かるものか。
私は常々そう公言してはばかりませんでした。
今まで、話す内容なんて、まともに考えたこともありません。
それがどうですか?
こうしてちゃんと、つながってるじゃないか。
ちゃんとした話が、こうして出来上がってるじゃないですか。
皆さんに、感動の輪が広がってるじゃないですか!

…本当か?
本当に分かってるのか?
おまえらに、この俺の熱い感動が、本当に伝わってるのか?
俺一人の空回りじゃないのか?
この俺の輪は、自己完結してるんじゃないのか?
閉じられた輪なんじゃないだろうか?
そう考えると、私はたまらない気持ちになります。
無残な、踏みにじられたような気持ちになります。
そこで、私はこの話を文章化してインターネットで公開するつもりです。
今ごろ、教頭がすべて速記しているはずです。

…なに?していない?
そもそも速記などできはしない?
…皆さん、この男は無能です!
何が教頭だかなんだか知らないが偉そうに。
だいたいその冷めた目つきが気にくわんのです。
最初からどうも嫌なやつだと思っていた。
ウマが合わないことはうすうす気づいていた。
私をどこか馬鹿にしている。
それが態度に現れている。
そのくせ言葉づかいだけはいやに丁寧だ。
最低だ。
まったく、最低です。
私の周りにはろくなやつがいない。
くだらない俗物ばかりで、息が詰まりそうだ。
モーツァルトの良さも分かりはしない奴等なのです。
確かに私も分かりません。
私もよく分かりはしないのだが、私は違う。
君達とは全く違った人種なのであります。
心構えが違っている。
センスがあるのだ。
潜在的には、よいものを持っているのだ。
音楽の道に進んでもそこそこのところまではいけると思っている。
ヒットチャート10位前後はいけるだろう。
スマッシュヒットくらいは狙えると、本気で考えています。

そこで実は今度、レコードを出そうと思っています。
その時には、この学校から口コミで火がつくものと信じています。
皆さん、ぜひお買いなさい。
今一枚いくらだか知らないが、安いものだろう。
悪い買い物じゃないだろう。
この私の話がエンドレスで入っております。
BGMつきです。
録音は本日です。
実はこのお話が、密かに録音されております。
これをそのまま、あますところなく、臨場感たっぷりに、高音質でお届けするつもりであります。
2枚組みです。
エンドレスです。
聞いているうちに頭がおかしくなります。
ここは吉ガイ学校になります。
確実であります。
君達みんな私の奴隷です。
逃れる術はございません。
残念ですが手後れであります。
君たちの人生はたった今決まってしまったのであります。
決定的な瞬間はたった今、一方的に訪れてしまったのです。
二度と取り返すことのできない青春の輝きは決定的に失われ、未来への可能性も徹底的につぶされてしまったのであります。
もうどうにもならない。
最後の瞬間は訪れ、そしてあなたたちは最後の時を迎えようとするしかないのかもしれません。
でもそれでいいじゃありませんか。
私はそれでかまいません。
ぜんぜんオッケーです。
むしろ喜ばしいことだ。
がんばれ!
がんばれ俺と俺の人生!
輝かしき未来は私の手に!
俺よ永遠に!
叫び笑い震え眠れー!
そして帰れー!
以上です。
全員起立!(拍手)